Contents
B-BOYカルチャードキュメンタリー映画「BBoy For Life」についてインタビュー
今回、ストリート・スタイルは「BBoy For Life」というダンスドキュメンタリー映画の監督(Coury Deeb)のインタビューに成功しました。
このドキュメンタリーは、南米のグアテマラが舞台です。グアテマラ・シティーの貧しいエリアでは、B-BOYダンスカルチャーが盛んです。ギャングの問題や貧困の問題で、ダンサー達の日常生活は、実際かなり苦しい。
しかし彼らの暗い日常生活の中にも、たった一つだけの希望の光がある。それがダンス。
ダンスを通して、彼等はこの過酷な日常から逃げ出す事が出来る。
B-BOYカルチャードキュメンタリー映画「BBoy For Life」についてCoury監督にインタビュー
Masa:
あなたは、グアテマラのB-BOYカルチャーについて、どういった経緯で知るようになったんですか?
なぜ、このテーマでドキュメンタリー映画を作ろうと思いましたか?
Coury監督:
私と映画クルーのメンバー達の中にグアテマラに住んでいる知り合いがいてね。彼らから様々なストーリーを聞いていた。
だから、ドキュメンタリー映画のアイディアを探す為に、2011年の6月にグアテマラ・シティーへ向かった。
そして、私達はグアテマラのゲットーで寝泊りしながら、ローカルのB-BOY達に出会い友達になっていった。彼らのライフスタイルについて色々理解するようになってきて、ローカルのギャング団達の話も沢山聞いたんだ。グアテマラのギャング達は、このエリアに、とても強い影響を与えている。
一度ギャングに入ってしまえば、ダンスが出来なくなるし、その環境からは逃げられなくなってしまう。それで私は、このコンセプトはドキュメンタリー映画を撮る上で、とてもパワフルなベースになると思った。グアテマラのB-BOY達は、毎日ダンスが出来るように日々戦って、サバイブしている。
Masa:
あなたはどういう基準で、この映画に出演するダンサーを選んだのでしょうか?
Coury監督:
私達は、はじめに3人のB-BOYを選びました。彼らは上手なダンサーで、かなりタフな日常生活を生きぬいている。私達は撮影とプロダクションのために、2回グアテマラに行く予定でしたが、一回目に撮影をしに行った時に、その3人を撮影する事は無理だと感じた。
彼らは、撮影の為の待ち合わせを忘れるし、ライフストーリーをしっかり語ってくれる時間も設けてもらえなかった。さらに、その3人の内の一人は、ずっと彼女と一緒にいて、彼女とデートする為に僕たちの待ち合わせを無視するわ、もう1人はいつも予定がいっぱいで、最後の1人は凄く優しかったけど、シャイすぎてカメラの前で話す事ができないくらいの性格だったからね。
だから、このドキュメンタリー映画のストーリーは中々進まなかった。監督の私と他のクルーメンバーは、徐々にフラストレーションが溜まって、この3人を使って映画を撮影するという事は無理だと思うようになったんだ。
しかし結局、その後に他のダンスクルー(「ポーカー・クルー」)に出会うことが出来た。彼らの方がダンス上手だったし、カメラの前でちゃんと話せた。そして、傲慢な態度を取ることもなかったね。その後、おかげで、素晴らしいドキュメンタリーをスムーズに撮影する事が出来たんだ。
彼らの話から、リアルでパワフルなストーリーを作る事が出来たと思うよ。このような事がドキュメンタリー映画の醍醐味だね。
Masa:
あなたたちは、グアテマラ・シティーの最も危険なエリアで撮影していました。撮影時に危険な事は起きましたか?
Coury監督:
かなりあったね。時々狭い小路を歩いていると、ワイルドなギャングメンバーに遭った。彼らは麻薬かアルコールで、かなり酔っているんだ。
ある日、ギャングメンバーは僕の頭の近くに銃を撃った。そして、撮影中にも、僕らがインタビューしている時に、突然車がやってきて、わざとハイビームで威嚇してきた。(いつでも、私達を撃つ事が出来るというような威嚇をしてきた。)だから、いつでも、どんな時でも警戒しなければならなかった。
別の日には、知らない男性がいきなり僕たちを追いかけてきたけど、僕たちが気付いた時には、彼は逃げていた。私達のセキュリティーガードは、その男性の車まで走っていき、叫びながら車を蹴った事もあったね。毎日のように、そういう事件があって、いつも緊張していたよ。
でも、このようなテーマ、場所でリアルなドキュメンタリー映画を撮影するという事は、そういうリスクがある。
社会問題を解決したければリスクを負わなければならないからね。
Masa:
あなたたちは、主人公達のChizとLeidi、Gatoの彼らと、心を通わせる事は出来ましたか?彼らは毎日、あなた達のカメラクルーに密着取材されていましたが、自然に接して話してくれましたか?
Coury監督:
そうだね。僕らは、とても仲良くなれた。
彼らは、とてもデリケートなテーマの会話をしていても(Gatoのお兄さんの殺人の話など)、しっかりと話しをしてくれたんだ。Leidiも、過去に犯罪を犯した時の話も隠すことなく正直に話して、過去に懺悔していたよ。
今までに撮影した各ドキュメンタリー映画などでもそうだったけど、主人公と仲良くなって、彼らのキャラクターをしっかりと引き出し、理解することは、このクルーの長所だと思うんだ。誤魔化さないで、その主人公のキャラクターをしっかりと引き出し、ありのままの自分を表現してもらう。そうする事によって信用が出来て、彼らもプロジェクトの目標を理解してもらえると思うんだ。
お互いの信頼関係が深くなればなるほど、もっと強くて深いインタビューが出来るようになるからね。
Masa:
あなたは、ドキュメンタリーを作りながら、ローカルの多くの人達と交流を深めてきたと思いますが、今でも彼らと連絡を取っているのでしょうか?
Coury監督:
私達は、まだグアテマラ・シティーで活躍しているチャリティーパートナー(Hope Renewed Intl.)と連絡を取っているので、まだコミュニケーションを続けているよ。月に一回くらい連絡しているかもしれないね。
そのチャリティーパートナーの人達は、ドキュメンタリーに出演しているダンサーと毎日コミュニケーションを取っている。だから、直接は話していないけど、彼らに関しての話題や最近のニュースについてもよく聞いているよ。
Masa:
あなたは、このプロジェクトを始める前にB-BOYカルチャーに興味がありましたか?
このプロジェクトをしてから、自分のヒップホップカルチャーに対するイメージが変わりましたか?
Coury監督:
このプロジェクトを始める前に、私はブレイクダンスのファンとは・・・言えなかったね。
でも、面白いと思って、時々ストリートで見ていたね。私はアメリカの都会で育った人間だからよくストリートダンスを観たよ。
しかし、それらが「ヒップホップ」だと思わなかった。僕は何も知らなくて、「ヒップホップ」イーコール「ラップ音楽」で、MTVなどのメディアの影響もあり、アグレシッブなギャングスターラップの存在したよく分からなくて、ヒップホップには少しだけネガティブなイメージがあったかもしれないね。
だけど最近は、ヒップホップの事実と、そのムーブメントについて色々学ぶ事があったので、カルチャーとして理解出来るようになったから、このカルチャーについて、色々なサポートしたいと思っている。グアテマラのB-BOYとB-GIRLは、ヒップホップの原点とも言える、貧しさから生まれるアート的な部分を見せたくれた。
Masa:
このドキュメンタリーは、どんな映画祭で上映される予定ですか?
Coury監督:
私達は、この映画 「BBoy for Life」を10以上の映画祭に提出したよ。
サンダンス映画祭に出品したし、ベルリン映画祭にも出品した。発表は今年の12月くらいだね。受賞するかどうかこの後知らせが来るはずだよ。受賞する事が出来たら、本当にうれしいよね!
Masa:
B-BOYカルチャーは、日本でもとても人気があります。この映画が日本で上映されれば、観に行きたいと思う人が多いと思います。今のところ、アメリカ以外の国でリリースする計画はありますか?
Coury監督:
勿論。アメリカだけのリリースにしたくないね。この映画は世界中、様々な人達に観られて欲しいんだ。私は、世界中のB-BOYカルチャーをリスペクトして、グアテマラ・シティーのB-BOYカルチャーだけではなく、世界中のB-BOYを応援したいと思っているよ。
Masa:
このプロジェクトは、チャリティー関連のプロジェクトですか?
この映画の収益は、グアテマラの人達に渡るのでしょうか?ストリート・スタイルの読者は、このプロジェクトに寄付する事も出来ますか?
Coury監督:
そうですね。これは主にチャリティーのプロジェクトです。
利益の大部分は、直接にグアテマラ・シティーの組織に送られる。そのチャリティーはローカルのゲットーや刑務所の人を助ける。映画に出演した人達だけではなく、他のローカル人にもサポートがまわるようになっているんだ。
それに映画の収益だけではなく、映画関連のチャリティー運動の寄付金は100%がチャリティーパートナーに送られる。
映画の上映イベントがある時に、その日のチケット代金は寄付としてチャリティーに直接に行く事になっている仕組みなんだ。
現在、この映画のプロジェクトに関する利益は、完全に寄付で賄えているんだ。
私達は他のイベントや、チャリティーパーティーにも参加しようと考えているよ。そして、僕のNadus Filmsへの寄付は、次の社会問題関連のドキュメンタリー映画を撮影する為に充てられている。僕らは、いつもポジティブなドキュメンタリーを作るような寄付やボランティアを探しているんだ。
Masa:
あなたは、この映画 「BBoy for Life」を以外にも、スダンのドキュメンタリー映画も作りました。スダンの映画を作った時の感想を聞かせて下さい。この映画は、どんなポジティブな成果をあげたのでしょうか?
Coury監督:
私は、その映画を作った時に、色々と学ぶことが出来た。
この映画「The New Sudan」という作品は、最初の映画として悪くなかった。
ニッチな映画で、教育的なドキュメンタリーとして考えてもらえばいいと思う。
「BBoy for Life」は、それよりも、ストーリー的なドキュメンタリーで、キャラクターを中心のストーリーで、もう少し広いマーケットを狙っている。
しかし、「The New Sudan」は、何万人の人達に見られた作品だった。僕たちは、映画の収益の$60,000をスダンへ送った。その結果、彼らローカルの人達に綺麗な水を作るシステムや、蚊帳、学校の教材を買う事が出来た。
だから私は、そのようなサポートが出来るように、いつも良い映画を作って成功したいと思っているよ。沢山の映画を作れば作るほど、ストーリーとマーケティングについて色々勉強になってくるしね。「BBoy for Life」は本当に良いストーリーで、私達クルーの経験の為にも、きっと成功するはずだと思う。今後もこのような成功をし続けるつもりです。
Masa:
今後将来に向けて、何か新しいプロジェクトを計画していますか?
Coury監督:
今、インド関連のプロジェクトを計画中です。
インド人の女性の問題や、養子のビジネス、人工中絶や人身売買などのテーマをベースにしたドキュメンタリー映画を考えているんだ。
今、様々なストーリーを考えているし、これらのストーリーを語る事が出来るキャラクターを見つける事が出来、製作資金が集まれば、撮影を進める予定。出来れば、もう直ぐ次のプロジェクトを始めたいと思っているんだ。
それに最近、もう一つのクリエイティブ関係の会社を作った。
Cash For Gold Creative Co.
Masa:
インタビューをしてくれて、ありがとうございました。
Coury監督:
こちらこそ。ありがとうございます。
BBoy for Lifeの予告
スポンサーリンク